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Tanemakiのロゴ

個人事業主として活動する私の屋号である”Tanemaki”のロゴを制作しました。

Tanemakiの由来

ロゴデザインについて綴らせていただく前に、まずはTanemakiという屋号について説明をさせてください。

Tanemakiという屋号の由来は、営業用語の「たねまき」から来ています。 営業用語で「たねまき」とは、「ご縁のある方々と更なる良好な関係を築き、新規ご発注や事業成果を実現させるために行う定期的かつ継続的な取り組みのこと」です。

以前私は都内の印刷会社で法人営業をしていたのですが、担当している既存顧客様から毎月コンスタントな発注が入るわけではありませんでした。いわゆる休眠顧客と呼ばれるお客様もたくさんいらっしゃいました。印刷する企画が無かったか、もしくは予算や仕様によって他の印刷会社さんとお取引をすることもあったのだと思います。

ただし、お取引が無い状態でも営業にできることはたくさんありました。それが「たねまき」と呼ばれるものです。

定期的な新商材の紹介やご挨拶に出向き、クライアント様の近況や課題をヒアリングして、抱えている課題に対して効果的な商材をご紹介します。
またアプローチの仕方は違えど、この「たねまき」の作業は新規見込み顧客に対しても重要です。広報活動や既存顧客からのご紹介からご縁は始まることが多いと思うのですが、「印刷といったら○○さん」と思ってもらえるように関係を構築します。付かず離れず、擦り込んでゆきます。

そんな「たねまき」活動の積み重ねがご発注に繋がります。

わたし自身が営業時代にたねまきを実らせることにやりがいを感じていたというのもありますが、今後はお客様の「たねまき」をブランディングやデザインを通してサポートさせていただきたいと思い、屋号を「Tanemaki」としました。

コンセプトとデザインについて

Tanemakiのロゴマークは①戦略性 ②可能性の広がり ③ワクワク感 という3つの軸をもとに制作しました。

①戦略性

「戦略性」という言葉はやや堅い印象があるかもしれませんが、Tanemakiがブランディングやデザインを進める際にとても大切にしている要素ですので、ロゴマークにはそのエッセンスを込めたいと思いました。

ロゴマークのコンセプトを考えるにあたり、「たねまき」という言葉を解体し、植物の種蒔きの方法や種類、そして種そのものについて様々な種類を調べ、そこから自分の事業へ通ずる点を抽出してみました。(そのために私は図書館で子供たちに混ざって植物図鑑や絵本を読みました)

その中で私が非常に興味深く感じ、且つブランディングやデザインに通ずる点として着目したのが「種の持つ生存戦略」でした。
植物の種子にとって親木からなるべく遠く離れた場所で発芽することは重要な生存戦略の1つです。親木の近くでは昆虫や動物たちに食べられてしまいますので、それぞれの植物には実った種をなるべく遠くへ運ぶ仕組みが備わっています。
たとえばタンポポは風を利用して種を遠くへ運んだり、カタバミは種が成長したときに勢いよく遠くまで飛び出していく構造をしていますし、ドングリはリスなどの動物に餌として自らを遠くへ運ばせ、その食べ残しから発芽します。
他にも種の形や発芽するタイミングにも工夫が凝らされており、小さな種たちは生き残り育っていくための力強い戦略をもっているのだと知りました。

この戦略性は、ブランディングではとても大切な軸になります。それゆえ、飛んでいく種の姿を取り入れることで、そんなTanemakiのブランディングやデザインへの取り組む姿勢を象徴したいと思いました。

②可能性の広がり

事業において「種をまく」ということは、トライ&エラーを繰り返しながらも未来のご発注や事業成果に向けて進、可能性を広げていくことです。
植物の種が蒔かれて散らばっていく様子を通して、そんな可能性が広がっていく姿を表現しました。

①戦略性 と ②可能性の広がり を表現しているのが、下図の部分になります。

「i」の頭の中心から螺旋状に広がってゆく種、そしてロゴマークの末尾に小さく佇む新芽。
とても小さいので、印刷された時などは「何かいる?」ぐらいの認識になるかと思いますが、可能性の芽生えとはそういうものかもしれない、とも思います。
ロゴマークを見た人に「もしかして、これって・・・!」とクスッと楽しんでもらえたら嬉しいです。

また、シンボルマークとしても使用している種のモチーフは、よく見ると散らばっていく種のようにも、太陽のようにも、風車のようにも見えるかもしれません。 そんな見る人によって解釈がさまざまに受け取れる“可能性”も楽しんでもらえたらと思います。

わくわく感

個人事業主として活動をしていますので、自分自身のもつ雰囲気や作るデザインが屋号のロゴマークとリンクすることも大切にしました。

たとえば私はブランディングやデザインを通してワクワクが増えていくのがとても好きですし、コミュニケーションに関しても「話しやすい」「その人の長所を見つけるのが上手い」「穏やか」と言っていただけることが多いです。(嬉しいので褒め言葉としてちゃっかりいただいています。)
ロゴマークにはそのように「くんちゃんらしいね」と思っていただける雰囲気を醸したいと思いました。また「戦略性」「可能性」というコンセプトがハードな印象を含む分、この「わくわく、楽しく」でロゴマークの雰囲気のバランスもとりました。

そしてこの「ワクワク感」を表現するために、書体はドイツのLinotype社のAkko® Pro Rounded Bold Italicをベースとして使用しています。ぷっくりとした愛らしいフォルムと、その中にある力強さが印象的なフォントです。

ロゴマークの展開

ロゴマークにとって大切なことの一つが、実用的な展開のしやすさだと思います。

今回の屋号のロゴマークを作る時点で、ポートフォリオサイトとプレゼン資料にロゴマークを展開して使用することは予め想定していました。 ですのでたとえばWebサイトのヘッダーへの収まりの良さや、資料フォーマットの装飾として活用しやすいモチーフにしようと考えながらデザインをしました。

上記のように種の広がる様を一つのモチーフとして展開できますし、もっとバリアブルに1粒もしくは1,000粒の種をモチーフとして展開することも可能です。
さまざまなシチュエーションに適応しながら展開できる面白さが、Tanemakiのロゴマークには含まれていると思います。

制作後記

自分の屋号のロゴマークを作ることで、改めて自分について主観的にも客観的にも考え、それをアウトプットして形にできたことで新たな一歩を踏み出せたように思います。

ありがたいことに、ロゴデザインのアワードであるタイポグラフィ年鑑2023にも入選することができました。
このロゴマークを「しるし」として掲げながら、今後もTanemakiの活動を楽しく進めていければと思っています。