【前編】対話を重ね、かたちにしていくロゴマーク制作
SAC's blue / きゃの様
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2025.05.09

茅ヶ崎市を拠点に、ご自身の経験を活かしたADHDコーチングをオンラインで提供しているきゃのさん。今回は、そのコーチング事業「SAC’s blue」様のロゴマーク制作をご依頼いただいたご縁で、お話を伺う機会をいただきました。
インタビューの前編では、きゃのさんがご自身の特性とどう向き合ってきたか、そしてその経験をどのようにコーチングに活かしているのかを中心に伺いました。
自分を育む、もうひとつの働き方
普段は精密機器メーカーの技術職に従事しつつ、週末を中心にADHDコーチングを提供しているきゃのさん。その活動の原動力や始めた経緯、ご自身の特性に気づいたきっかけについてお話を伺いました。
── 本業の技術系のお仕事もお忙しそうですが、さらに副業もされているというのは、本当にパワフルですよね。
きゃのさん:そうですね。副業というとお金を稼ぎたくて取り組むイメージがあるかもしれないのですが、僕の場合は自分の興味とコミュニケーション面でのスキルアップという目的が合わさって行なっている「複業」といった感じでしょうか。元々いろいろな人の話を聞くのが好きなのですが、コーチングを通してクライアントさんの話を聞いたうえで、どんな言葉を投げかけようかと考えるのは興味深いですね。
──ADHDコーチングを始めたきっかけは何だったのでしょうか。
きゃのさん:本業では精密機器メーカーの技術職に就いていて、社外の人と関わる機会がほとんどありませんでした。だから、「もっと人と関われる仕事にも挑戦してみたい」と思ったのが始まりです。もともと興味のあった分野でしたし、英語を学びながらADHDについての知識も深めていくうちに、自然とこの道に進んでいった感じですね。
それに、僕自身もADHDの当事者なので、自分の特性を理解したいという思いもありました。
最初から「誰かを助けたい」と思っていたわけではないのですが、自分の興味や好奇心に正直に進んでいたら、いつの間にかたどり着いていた、という感覚です。

ADHDの特性と、働き方の選択肢
「じっとしていられない」「忘れ物が多い」など、ADHDの特徴は人によってさまざま。ADHDの主な特徴やタイプの違い、診断後の働き方について、きゃのさんが自身の経験を交えて話してくれました。
── きゃのさんがADHDと診断を受けたのは、いつ頃だったのですか?
きゃのさん:社会人になってからでしたね。学生時代からアルバイトはしていたので、自分が単純作業や決められたとおりに動くことが苦手だという自覚はあったのですが、当時はADHDという言葉を知らなかったんですよね。実際に就職して働き始めたら、自分の特性と合わない部分が目立ってきて、精神科に行き、ADHDの診断を受けました。今は薬の服用や会社の臨床心理士との面談で心のケアをしています。自分に不向きな作業とエネルギーを注げる作業を見極めて、それを活かした働き方ができるよう意識するようになりました。
── ADHDとは、そもそもどのようなものでしょうか。
きゃのさん:ADHDとは「注意欠如・多動症」と呼ばれる発達障害の一種です。脳の神経伝達物質であるドーパミンの機能不全によって、不注意になったり、逆に過集中(集中しすぎてしまう状態)になってしまうんです。
ADHDには、大きく分けて3つの型があるといわれています。
①多動性・衝動性優勢型:
じっとしているのが苦手だったり、衝動的に行動してしまうなど、行動面に表れやすいため、小さい頃から気づかれやすい傾向があります。
②不注意優勢型:
忘れ物が多かったり、ぼーっとしているように見えたりするため、ADHDではなく「おっとりした子」と受け取られやすく、そのため子ども時代には診断が遅れることもあります。しかし、大人になり社会に出る中で、不注意の傾向が困りごととして表面化し、そこで初めてADHDと診断を受けることも少なくありません。
③混合型:上記2つの特性がどちらも見られるタイプ。
ちなみに僕自身は、②不注意優勢型にあたります。
── ADHDと診断された場合、障害者手帳の発行や障害者雇用の対象になるのですか?
きゃのさん:はい、対象になります。僕も手帳を持っていますが、現在は一般雇用で働いています。手帳を持っているからといって、必ずしも就職の際に申告する必要はなく、一般雇用を選ぶこともできます。ただ、年末調整で障害者控除を受けた場合は、会社に知られる可能性はあります。
障害者雇用の大きなメリットは、自分の特性に合わせた配慮を受けやすいことだと思います。たとえばADHDの方なら、マルチタスクが苦手なことをふまえて、紙で指示をもらうなどの工夫をしてもらえることもあります。ただ、障害者雇用は一般雇用に比べて賃金が圧倒的に低いので、現実的には一般雇用を選ばざるを得ないケースも少なくありません。
特性を知り自分を活かす、きゃのさんのADHDコーチング
きゃのさんは、2022年8月頃から、週末を中心にADHDコーチングを開始。2023年5月には、国際コーチング連盟(ICF)認可のADD Coach Academyにて資格を取得しています。ADHDならではの特性や困りごとに寄り添いながら、クライアント自身が「自分を知る」ことで前に進むためのサポートを行うのが、きゃのさんの考えるADHDコーチング。当事者としての実感がこもった言葉は、クライアントにとっての安心にもつながっているようです。
── ADHDコーチングは、一般的なコーチングとどんな違いがあるのでしょうか?
きゃのさん:一般的なコーチングとの違いはさまざまにあります。たとえば、ADHDの方は罪悪感を抱えやすい傾向や、ネガティブな思考がぐるぐる巡る「反芻思考」に陥っている場合もありますので、セッションを進める前に、そういったクライアント自身の状態に気づいてもらうステップを設けるようにしています。
── ADHDコーチングならではのアプローチがあるのですね。そのステップをふまえて、きゃのさんが提供するADHDコーチングは、どのように進められているのでしょうか?
きゃのさん:まずは、ADHDの脳の特性を理解することから始めます。たとえば代表的なADHDの特性でいうと「興味のないことに注意が向きにくい」という特徴がありますが、その中で自分の力をうまく発揮するには、「どんなことに興味があり、それをどう維持するか」を意識することが大切なんです。
こうしたADHDの特性をクライアントと共有しながら、それぞれの困りごとに合わせて具体的なサポートを進めていきます。たとえば「先延ばしにしてしまう」「忘れ物が多い」といった困りごとの背景を一緒にひもといて、スモールステップを作ったり、忘れやすい状況を分析して対策を考えたりしながら、具体的な工夫を重ねていきます。
そうやって少しずつ取り組んでいく中で、ADHD特有の悩みからくる罪悪感が、少しずつやわらいでいくこともあります。
また、ADHDには症状の出方や程度に幅がありますし、人によって興味を抱く分野も異なります。 だからこそ、ADHDの特性と個人の個性を掛け合わせて、どんな生き方をしたいかを一緒に考え、さらに自己理解を深めるサポートをするのが、ADHDコーチングの役割だと考えています。
── 症状だけでなく、一緒に生き方を探っていくものなんですね。きゃのさんのコーチングは、当事者としての視点や経験があるからこそ、相談する人も安心して話せる。そして、その働き方そのものが「自分らしく生きる」ヒントになるのではないでしょうか。
きゃのさん:こういう在り方もあるよ、という一つの例になれたらうれしいですね。
── 実際にコーチングに参加している方からは、どのような感想がありますか。
きゃのさん:「優しい雰囲気で何でも話せて信頼できる」「コーチングを通じて自分の特性に初めて気づけた」「目標に向かって頑張り続けられて感謝している」といった言葉をいただいたりすることもあって、本当にありがたいなと思っています。
その一方で課題もあり、オンラインでのコーチングでは、クライアントとの距離感が繊細で、どこまで寄り添うかの加減が難しいと感じることもあります。もっと関わってほしい人もいれば、逆に距離を取りたい人もいますので、そのバランスを取るように心がけていますね。
インタビュアー:河原
文:館駒








